ずいぶんご無沙汰しております。
あっという間に修士課程を終えて、10月から「Konzertexamen」という課程に在籍しております。
Konzertexamenってなに??コンツェルトイグザメン??
大体の人にそう聞かれますし、私もドイツに来る前はそう思っていました(笑)
一言で言うと、ドイツの音楽大学における、修士課程の次の課程、博士課程のようなものです。
教育系の専攻にはなく、演奏系の専攻にだけ存在します。
ただし博士論文もないし、研究もしないし、在籍期間も1年から2年と短いのが特徴。
日本語では「国家演奏家資格課程」と言われたりしていますが、ソースは不明。修了したら本当に国家資格的なのがもらえるのか…?とよくわかってはいませんが、まぁそう呼ばれたりしています。
ちなみにこちらでの日本人同士での通称は、「イグザメン」です。(笑)
Konzertexamenとは
前述したように、修士課程を修了したあとに進める課程です。
私の学校(リューベック音楽大学)ではそう名付けられていますが、他の学校では「Meisterklasse」「Meisterkurs」「Solistenklasse」とされていたり、ドイツ以外の国では違う名前になっているところもあるみたいです。
どちらかというと「ソリスト課程」という訳し方が近い気がします。日本でいうところの、「ソリストコース」だったり、「ディプロマコース」が似たような感じでしょうか。
アメリカの大学にある「アーティストディプロマ」という課程と同じとも聞きました。
ドイツ語ですが、Wikipediaもありますので気になる方は参照してください↓
https://de.wikipedia.org/wiki/Konzertexamen
どうやったら入れる?
まず必須条件として、修士課程(またはそれに相当する学位)を終えていること。
そして、大半の学校で、修士課程をいい成績で終えていること(その証明書の提出)が求められます。
あとは学校によって求められる条件は違いますが、出願時にその受験校の教授の推薦状が必要だったり、年間10回以上のソロコンサートをしている(!)ことだったり、1年以上のオーケストラ等での職務経験が必要だったりと、様々です。
要するに、「ソリスト課程」なわけです(2回目)。
入学の難易度は?
相当高めです。
修士課程の入試までは楽器ごとに審査され、その楽器のみの先生たちもしくは同じジャンル(例えばオーボエなら木管の先生たち)が審査員になるわけですが、この課程の入試では全ての専攻が一度に審査されて、全ての専攻の先生たちが審査員として聴いています。そして一回の入試で合格する人数は全部で2-3人とされています(学校やそのときによって違います)。
入試課題は学校によってまちまちですが、少なくとも30分から、長いところだと100分のプログラムを提出して、当日指定された箇所を演奏することが多いです。
ピアノ専攻だと、ソロ作品だけでなく協奏曲の演奏が必須課題になっているところもあるようです。
この入試は普通に「異種格闘技戦」ですし、ソリストとしてバリバリ活躍しているピアノや弦楽器の学生が通ることが多いかもしれません。
余談ですが:
Konzertexamenの受験を何校か考えていて、ベルリンのハンスアイスラー音大の先生のところにもお試しレッスンを受けに行きました。「Konzertexamenで受験を考えているのですが…」と言ったら、ちょっと考え込んだ先生。「うーん、なかなか難しいかもしれないね。この学校はピアノやヴァイオリンの世界レベルの学生たちが受けにくるんだ。前回の入試でも上手い子がたくさんきたけど、誰も合格しなかった。それくらい難易度が高い。僕が良い、と言ってもダメで、他の先生も良いと言わなければダメなんだ。オーボエでってなるともっと難しい。ちょっと厳しいね。」とはっきりおっしゃってくれました。ハンスアイスラーの学校としてのレベルの高さはよくわかっているので、結局ハンスアイスラーの受験は諦め、リューベックともう1校に出願、もう一校はダメだったのでリューベックにそのまま進学しました。
自分の時の入試はどうだった?
私の時は、事前のビデオ審査に通った15名ほどが受験に来ていました。
合格したのは私(オーボエ)と、もう一人(クラリネット)の2名。
二人とも元々リューベックの学生だったので、二人とも内部進学と言ってしまえば、そうです。
というかどこの学校でも、こういう類の内部進学って結構あると思います。だって学生も先生たちも、お互いに知っているから😂
普段からおさらい会や試験で演奏しているホールが試験会場で、いつも伴奏してくれている伴奏助手の方が試験でも担当で、自分の先生が入試直前に励ましてくれて、入試会場にはよく知っている先生たちが座っている…もちろん点数がフェアで、内部生の優遇等が一切ないとしても、メンタル的には有利なのです。内部進学が多い理由はここなんじゃないかな〜と思います。
でも、珍しく管楽器が二人合格した入試だったようです。自分の先生は審査員としていませんでしたが、オーボエの合格はウン年ぶりらしい…🤭(ちなみに私の先生は最後のイグザメンの学生がいついたのか覚えていない模様)。
カリキュラム、修了要件
学校によって大きく違うと思われるのと、リューベックでさえ、内容が違う二つのKonzertexamen課程(!)があるのでなんともいえません。ここでは自分のカリキュラムを紹介します。
- 研究・論文がない。
- 学費は学部・修士と同じ。ゼメスターチケット(州内交通機関乗り放題チケット)付き。
- 在籍は4ゼメスター(2年間)。
- カリキュラムは90分/週のレッスンと、週1回の座学授業。
- 卒業試験は、90分のリサイタルと街のプロオケとコンチェルト
修士課程よりも必修科目が減りましたが、卒業試験の二つを同じ時期にやらないといけないのがなかなか大変そうです。でもソリストコースだし、世の中のソリストはみんなそういうスケジュールが当たり前なんだよな…と思って、ソリストのすごさを身にしみて感じています👶
なぜこの課程に挑戦したのか。ソリストになりたいの?
実はいただいているDAADの奨学金と深い関係があります。
DAADの奨学金は本来、修士の間の2年間のみの支援ですが、音楽専攻者が「Konzertexamen」または同クラスの課程に進んだ場合、2年間延長することが可能なのです。
ドイツでもう少し学生として学びたいというのと、コンクールやオーケストラのオーディションにチャレンジする期間が欲しいと思ったので、イグザメンを受験するという挑戦に至りました。
先生に受験を相談したときには、「うん、オーボエで合格するのはnicht unmöglich(不可能ではない)よ」と言われ、それって限りなく可能性低くない…?!と思ったのを覚えています(笑)。
本当に運がよかったです🍀
ソリストになりたいと思っているわけではないのですが、コンクールに挑戦したい気持ちはあるのであながち間違いではないかもしれません。
Konzertexamen以外の選択肢
日本で学部を卒業して、修士課程からドイツに来る方が多いと思いますが、その後ドイツで学生を続けるには、まだ他にも選択肢があります。
Kontakt Studium
「聴講生」のような制度です。藝大でいうところの「別科」に近いかもしれません。すべての学校にあるわけではなさそうですが、入試なしで先生からのレッスンを受けられます。正規の学生というポジションではないので学費が割高ですが、もちろん図書館・練習室などは使えます。
2回目の修士課程をやる
室内楽科や現代音楽科などがある学校があり、そこでは2回目の修士をやることが可能です。NRW州の音大には「Orchesterzentrum」という、いわゆる大学で専門的にオーケストラを学べる専攻を設けているところもあります。「オケアカ」的なところですね。https://www.orchesterzentrum.de/
そもそも修士課程を修了しない
これが一番手っ取り早くてポピュラーな方法なんですが、途中で休学したり、卒業試験を先延ばしにしたり、いろんな方法を駆使して「学生で居続ける」という方法があります(笑)。
EU圏外の学生にとっては、ビザが切れてしまってはドイツに居られないので、なるべく学生として在籍して、その間にオーディションをたくさん受けたり、コンクールを受けたり、というのが割と一般的です。私はきっちり2年間(4ゼメスター)で修士課程の卒業試験をやったので、いろんな人に、伸ばしたりしないの?!もったいない!!と言われました。ええ、ちゃっかりあと2年居座りますとも…😇
実際どんな感じ?
在籍している課程が変わったからといって、特に今までの学校生活と変わりません。行かないといけない授業が少なくなって、気持ち的に楽だな〜というくらい(笑)。
ただ、今までよりいろんな人が室内楽などに誘ってくれるので、そこは有り難いですね。
終わりに
授業は少なくなりましたが、日々やることはめちゃくちゃあって鬼忙しいです。
それもあって全然ブログを書けていなかったんですが、忙しすぎて疲れが溜まりダウンしたので、ずっと取り上げようと思っていたトピックを書いたのでした。
この夏もその前も(6月の入試、7月の卒試)、まぁ本当にいろんなことがあったけどそれも全て書く暇がなく、すでに本日第一アドヴェントを迎えました。クリスマスがもうすぐそこですね。
書きたいことはたくさんあるので、どうかこの冬は心の余裕と時間の余裕ができますように…
そして早く私のこの風邪が治りますように…(熱は下がった)(鼻詰まりが酷すぎて絶賛口呼吸)(3日間でティッシュ一箱消費)(風邪を引くのは今年3回目)(多すぎるわ✋)
体調にはお気をつけて…ではまた!😷
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