ドイツのオーケストラにある特徴の一つとして、
「オーケストラアカデミーでの研修制度」
が挙げられます。
ドイツの場合はほとんどのオーケストラに、学生向けの制度であるAkademie(アカデミー)またはPraktikum(プラクティクム・研修生)が設けられており、音楽家を目指す若い人たちが経験を積めるような場が提供されています。
日本では「N響アカデミー」としてNHK交響楽団にこの制度があります。
現在私はリューベックの歌劇場でプラクティクム(研修生)としてお世話になっているので、実際どんな感じなのかをお伝えします。
アカデミーと研修生の違い
基本的にあまり相違はありません。
期間は1年から2年程度で、26歳くらいまで申し込めるところが多いです。
条件は「音大に在籍していること」となっているところが多いかも。
研修内容は、正規の団員さんと同じように、月に15−20回ほどのリハーサルやコンサートに参加します。
アカデミーは奨学金という名目で毎月800-1000€程度もらえるのに対して、研修生は都度のお給料と言う形になります。お給料なので、税金も引かれます。
そのほか、アカデミー生はメンタルトレーニングや団員さんからのレッスンを受けられるほか、大きいオーケストラのアカデミー生になればアカデミーコンサートもあるので経験をたくさん積むことができそうです。
アカデミーも研修生もオーケストラの中で団員さんに混ざって演奏するので、いい演奏をするために準備するという点では何も変わらないのですが、私のイメージでは、アカデミーは教育機関、研修生はインターンに近いような気がします。
オーケストラによって、アカデミーだけがあったり、研修生と両方があったり、または研修生だけだったり(リューベックの管楽器セクションは研修生のみ)するので自分でどちらに入りたいと志願することはなかなか難しいですが、基本的にはアカデミーがあると思ってもらって大丈夫です。
どうやったら入れるのか
やはりオーディションです。
Probespielと呼ばれるオーディションを受けにいき、1次審査、2次審査、多い時には3次までやって一人または二人を決めます。
アカデミーに限らず正団員・契約団員のオーディションでもそうですが、1次審査では定番の課題曲(オーボエやフルートは大体モーツァルトの協奏曲)を、2次審査ではオーケストラスタディを演奏することが多いです。正団員のソロのポストの場合はもっと協奏曲の課題が多いこともあります。
オーケストラスタディとは:
ドイツ語では「Orchesterstellen」と言い、オーケストラ内で演奏するソロの部分や難しい部分のことです。日本語では略して「オケスタ」と呼ばれています。オーディションへの招待がきた時点で、曲が指定されているので、その曲のオケスタ部分をオーディションで一人で演奏します。テンポ感や音程感、音量の変化などを一人で作って演奏できることが要求されます。
そもそもドイツでは、オーディションを受けるためにEinladung(招待)が必要です。オーディションへの申し込みは誰でもできますが、必ずしもEinladungをもらえるわけではないというのが難しいところ。
履歴書などで、Einladungを出すかどうか判断しているようです。
でも確かに、一人の席に200人も応募が来たりしたら聴くのが大変すぎるので、書類選考という形である程度絞るのは理にかなっています。
実際のお仕事
私は研修生なので、常に2番オーボエを担当しています。
歌劇場のオーケストラは、劇場でやるオペラと、コンサートホールでやる定期演奏会が主な仕事です。バレエ団がある劇場は、バレエ公演でも演奏します。
私はあくまで研修生なので勤務回数はあまり多く無いですが、上司である団員さんとどんなプログラムに乗りたいかなどを相談して、公演に参加しています。
初めてオーケストラピットで演奏した時の、「ドイツの劇場で演奏してる!!」というドキドキ感は今でも忘れられません。
オペラとシンフォニーコンサートでは、耳の使い方や音の鳴らし方が全く違うので、毎回緊張しつつも楽しく公演に乗らせてもらってます。
アカデミーをやることのメリット
経験を積めるというのはもちろんのこと、アカデミーを経験したというその肩書き自体が重要な意味を成してきます。
前述したように、オーディションを受けるには招待がつきものなので、履歴書に「〇〇オケでアカデミーを経験しました」と書くだけで、団員のポストの招待を受けられる確率は高まります。
アカデミーの中でも、最高峰と言えるのはベルリンフィルの「カラヤン・アカデミー」です。
2年間、ベルリンフィルの中で演奏できるという夢のようなチャンス。でもアカデミーコンサートを見れば、エリート集団であることがよくわかります(笑)
私の恩師もカラヤンアカデミー出身。憧れです。
終わりに
なかなかイメージのつかみにくいアカデミー/研修生制度ですが、伝わったでしょうか?
年齢制限がある上に、在籍期間が長めなので、頻繁にオーディションがあるわけではないというのがネック。
留学を始めたら、ひとまず募集が出てるアカデミーをバンバン受けることをお勧めします。
ドイツのオケにはほとんどありますが、周りの国にもあるところにはあるようです。
アカデミーをやるだけでも留学する価値があると思っているので、興味のある方はぜひチャレンジしてみてください。
ではまた!♫
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